2013年10月28日月曜日

WinJUPOSを使ってみよう (De-rotation編2)


今回は、実際にDe-rotation機能を使用してみます。
前回の説明で、3つの補正機能があると言いましたが、最初に、"De-rotation of images"の説明をします。

1:De-rotation of images



この補正は、複数の時刻に撮影された画像を、位置補正をしてコンポジットします。操作は簡単で、説明と言っても、実はあまりやることはありません。前々回で説明した方法で、処理したい画像のimsファイルを作成しておけば、1分もかからないでコンポジットができます。 手順は、次のとおりです。

2013-11-07 追記)-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 コンポジットする前の画像ですが、wavlet等処理前の画像?か、処理後の画像か?という質問がありました。
 どちらでも似たような画像になりますが、手間で考えると、次の手順が一般的だと思います。
  ① 複数のスタック画像(強調処理前)を用意
  ② imsファイルを作成
  ③ WinJUPOSでコンポジット
  ④ 処理された画像を、Registax等で強調処理。
 この手順であれば、強調処理は1回で済みます。また、ノイズの少ない画像で、強めの処理もできます。
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 ・ コンポジットしたいimsファイルを、複数用意します。用意するimsファイルは、サイズや撮影時の天体の傾き等を
     気にする必要はありません。imsファイル作成時の情報からこれらを計算し、自動補正してくれます。

 ・ 画面右の[Edit]ボタンをおしてAddを選択すると、imsファイルの選択画面が開くので、まとめて選択してください。

 ・ 選択されたImsファイルが、Listに表示されます。Listの項目には、Ganma、LD Valueの設定があります。
   Ganm設定は、通常は1.00でOKです。LD Valueは、リム付近の輝度を操作するのに使用します。
   効果は、次回説明します。

 ・ 次に、保存先やコメント、画像サイズなどを設定します。また、生成される画像の南北も設定できます。
   日本では、眼視観測を考慮して、南を上で表示するのが一般的なので、South at top側を選択します。

 ・ 設定が完了したら、中央右にある、[Compile image (F12)]ボタンを押してください。処理が開始し、生成された
  画像が表示されます。 これでおしまいです。簡単でしょ!!


De-rotation機能を使用して画質を向上させる場合は、できるだけ撮影時間が長い方が有利です。個人的な感想ですが、10~15分ぐらいで試してみると、効果が確認しやすいです。また、最初はシーイング条件が良い日の画像で、テストしてみることをおすすめします。

最後に、先日撮影した画像での結果を載せておきます。
下記は、2分間のL画像を1枚だけ処理した場合と、De-rotation機能で4枚スタック(計8分)した画像です。
やや強めのWavlet処理で、ノイズを目立つようにしていますが、当然、重ねた方が画質が良好です。しかし、この程度の差とも言えます。
また、WinJUPOSでの合成はリムに不自然なリングが発生します。当然、自転とともに見え隠れするエリアなので、出て当たりまえです。多少なりとも後処理を楽にするには、前記したLD Valueを調整します。ちなみに、今回の画像は、全てLD Value=0.8で処理しています。


では、WinJUPOSを使用しないでスタックした場合はどうでしょう? 下記がその結果です。
Photoshopを使用し、差の絶対値で模様のズレを確認した後、スタックしています。
いかがですか? あまり差が無いような・・・ でも、リム付近の解像度はWinJUPOSがやや勝っています。それ以上に、重ね合わせる手間が、まったく違います。
RB星さんは、昔から複数の動画を処理してスタックし、高解像度の画像を得ています。Registaxなどのスタックソフトは、模様を追いかけるので、長時間撮影でも意外と模様が重なります。ただし、移動に伴う、位置精度がいつも議論になっていました。WinJUPOSは、元々位置測定用のソフトなので、そのあたりは十分考慮されていると思います。
長くなってきたので、残りは次回にします。  ・・・・なかなか終わらない。




2013年10月23日水曜日

WinJUPOSを使ってみよう (De-rotation編1)


今回は、WinJUPOSのDe-rotation機能について、説明します。
ここまで引っ張って言うのもなんですが、この機能を使用すれば、一気に画質が向上すると思っていると、かなりがっかりします。この機能が真価を発揮するのは、シーイングが良好な時の画像だけです。
 ※ 個人的な意見です。人によっては効果があるかも・・・
ただし、私のように、フィルターワークでL・R・G・B合成をしている方は、必須と言ってもよいでしょう。
さて、前置きは、このくらいにして、本文に入ります。

WinJUPOSのDe-rotationとは、自転に伴う表面模様の移動を計算し、特定時刻の位置までシフトさせる機能です。木星や土星などは自転速度が速いので、撮影して間にどんどん模様は動いていきます。このため、撮影時間を1~2分で制限するのがセオリーなのですが、この制限を無くす方法のとして考案されたのが、この機能です。
自転に伴う模様の移動は計算できるので、撮影時刻の違いでずれ量を計算し、画素をシフトさせて、画像を重ねます。これにより、長時間撮影された個々の画像を、精度よく重ねることができるようになりました。当然、スタック可能なフレーム数が増えるので、ノイズが減少し、強い画像処理が可能になります。






※ 木星などの模様は、リムと中央(CM)で見た目の移動量が変わります。したがって、時間差のある画像を、平行移動
   しただけでは、完全に重なりません。

WinJUPOSでは目的に応じて、下記の3つの補正機能が用意されています。

① De-rotation of images
   複数の画像をコンポジットします。高解像度のL画像を作成する時などに有効です。 
   複数画像の撮影時刻から、その中間時刻の位置に、模様を合わせこみます。

② De-rotation of R/G/Bfrmaes
   RGBまたは、LRGB画像を合成します。私が、通常使用している機能です。 
   RGB合成では、撮影時刻の中間時刻に模様を合わせこみます。
   LRGB合成では、L画像の中間時刻に模様を合わせこみます。

③ De-rotation of video strems
   撮影された動画の各フレームに対して、模様の補正を行います。結果は、aviまたはserの動画として保存されます。
   または、スタック処理をして、pngファイルとして保存することもできます。 
   ※ ER34さんへ:スタック機能があるのを忘れていました。でも、ほとんど使ったことはありません。
   
眠いので、今日はここまでにします。次回は、上記機能の説明です。
ではでは
  
   

2013年10月20日日曜日

WinJUPOSを使ってみよう (基礎編)



WinJUPOSというソフトがあります。撮影もしくはスケッチなどの画像データから、模様の緯度経度などを測定する目的で開発されたソフトです。しかし、色々な機能が追加され続けていて、昨年あたりからは、高解像度画像を作成するのに有効な、De-rotation機能が追加されました。海外の画像を見ると、この機能を使用して、20分に及ぶ画像をスタックしている方もいます。
天気も悪く、出張ばっかりでネタが無いので、簡単ですが使い方を掲載します。
今回は、基礎編として画像の読み込み方と、上記画像のような惑星の展開図(MAP機能)の作成方法を説明します。
 ※ 昨年の8月に撮影した画像を4枚使用して、作成した展開図です。

1- WinJUPOSの初期画面
  WinJUPOSを立ち上げ、まず最初にメニューのProgram - Celestial bodyで
  処理する惑星を選択します。
      ※今回はJupiter






2- 画像の読み込み
  メニューのRecording - Image measurementを選択すると、画像の取り込み
  Windowが開きます。
  
  最初に、Imag.タブのOpen imageボタン(①)を押して画像を選択します。 
  事前に、画像の向きを南北に合わせる必要はありません。
  
  次に、撮影日時・時間を設定します。(②) 時刻は、
  世界時(UT)のみです。また、秒の設定はありません。
  0.1分刻みの設定なので、注意してください。
  惑星の場合、1~2分程度の動画をスタックしているの
  で、撮影時刻に幅があります。通常は、撮影時の中央の
  時刻を設定するのがルールです。


3- 画像のOutlineの計測と保存
  ここでは、撮影された木星画像の外形サイズなどを計測
  し、結果を保存します。ここでの測定結果が、WinJUPOS
  の大半の機能に使われます。
  まず、Adj.タブ(③)を選択してOutline frameボタン
  (④)を押すと、メニューリストが出てきます。
  最初にある、Automatic detectionを実行すると、
  木星の外形を表す、白い円が木星画像のサイズに
  合わせてきれいに重なるはずです。ここで
  注意するのは、南北方向が間違っていないかです。
  Nのマークが北ですが、画像の初期位置によっては、
  南北を逆に設定することがよくあります。違う場合は、
  手動で補正します。
  手動操作は、次のとおりです。

   [↑]、[↓] キーで、枠は上下に移動 
    [←]、[→] キーで、枠は左右に移動 
    [N]、[P] キーで、枠は左右に回転 
    [PageUP]、[PageDN] キーで、枠が拡大・縮小
   上記キー+[Ctrl] キーで操作量が大
   上記キー+[Shift] キーで操作量が少

  通常、南北が失敗した場合は、[P] or [N]キーで
  枠を回転させて、Nのマークを北半球まで移動させます。
  そこで、再度Automatic detectionを実行すれば、
  南北は正しく合うはずです。最初に、軽く合わせて
  おくと一発で決まります。なお、木星以外の惑星は,
  このAutomatic detectionは選択できません。土星の
  場合は、リングを利用し、火星や金星は満ち欠け
  を利用して、手動で合わせこみます。

これで、Outlineの計測は完了です。再びImag.タブを選択し、Saveボタンを押して結果を保存して下さい。生成されたファイルは、拡張子が".ims"になります。ちなみに、Loadボタンを押すとimsファイルを読み込むこともできます。

4- Mapを作成する
  メニュー画面で、Analisys - Map computationを選択すると、新たにWindowが
  開きます。まず最初に、右上のExit - Addを選択して、先ほど作成したims
  ファイルを読み込みます。
  次に、Listの下にある、Map Fileで保存先を指定して、Compile mapボタンを
  押すと、展開図が作成され表示されます。 簡単でしょ!
  今回の例は、画像が1枚だけなので、展開図は一部のみになります。全周の
  展開図を作成する場合は、位相の異なる画像を最低でも3枚は用意して、同じ
  ようにimsファイルを作成し、まとめて処理します。
  注意したいのは、読み込んだ直後は、各画像の表示範囲は全て0~360°に
  なっています。このままだと、複数の画像を読み込んでも表示範囲が、重なる
  ため全周の展開図になりません。各画像の表示範囲は、Listの項目にある
  ”From L”と”To L”で設定できます。各画像のどの範囲を表示させるかは、
  画質等を見て判断してください。

  Map作成画面では、極から見た展開図を作成する機能もあります。先頭の
  見本画像には、この画像も載せています。  
  作成するには、Projection typeの枠内にある、Polar projectionを選択します。
  後は、展開図と同じ要領です。

最初は、メニュの多さに腰が引けそうになりますが、使用してみると、そんなに難しいソフトではないことが実感できると
思います。 WInJUPOSの大半の機能は、今回作成したimsファイルを元に処理されます。このフィアルが出来れば、
作業の70%は完了したと思ってOKです。
次回は、De-rotation機能について書いてみます。
ではでは・・・




2013年10月9日水曜日

10月8日(JST)の木星


台湾ナウです。
8日早朝の木星です。急遽、台湾出張が決まったので、しばらく撮影はできそうにないので頑張ってみました。3時前はベタ曇りでしたが、3時半過ぎから雲が薄くなってきたので、撮影を開始しました。
雲が流れてくので、光量の変動は激しいものシーイング自体は良好でした。祈るような気持ちで、画面と空を交互に見ていましたが、LR撮影の時点で完全に雲の中。15分近く待って、GBの撮影をしました。この時のシーイングは、最悪でした。
時間差が大きいので、当然、RGBの画像のズレは大きいですが、WInJUPOSのローテション補正機能で、結構それっぽく仕上がります。WinJUPOSは、本当に便利なソフトですね。ただ、さすがに画像の左縁付近に無理やり感が出てしまいました。経度的には、GRSがまさに沈んでいくところです。
撮影後は、爆睡。朝起きたら快晴でした。さすがに太陽を撮影する気力も時間も無く、出社しましたが、あとでみなさんの画像を見たら、大きく広がったプロミネンスが見えていたようで、残念です・・・でも、平日は無理・・・