少し間が空きました。ごめんなさい。さて、今回で終わるでしょうか?
2:De-rotation of R/G/B Frames
この機能は、RGB・LRGB合成時の模様のズレを補正します。LRGB合成は、近年、惑星撮像の主流です。これは使えそうと思うかもしれませんが、残念ながらこの機能はかなり限定的です。つなみに処理できるのは、次のとおりです。
・ R/G/Bフィルターで個別に撮影された画像による、RGB合成。
・ L/R/G/Bフィルターで個別に撮影された画像による、LRGB合成。
多くの方が行っている、L画像+カラーCCD画像によるLRGB合成はサポートしていません。カラー画像をR/G/Bに分解してimsファイルを作成すれば、処理は可能ですが、手間がかかるので、あんまりやる意味ないでしょう。あえて行うとすれば、天候等でL画像とカラー画像の撮影時間に間が合いた場合は、有効かもしれません。
ちなみに、使い方は簡単です。LRGBの各画像をimsフィアルにして、読みこむだけです。Red/Green/Blue Channel、さらに、Luminescenceにimsファイルを割り当てれば、RGBまたはLRGB画像が得られます。
ちなみに、私はフィルターワークでL/R/G/Bを撮影しているので、この機能が必須です。
3:De-rotation of video streams
さて、最後にクセモノの登場です。
ある意味、この機能が基本のような気がしますが、これがなかなか思った様にいきません。
まず、この機能の基本は、撮影した動画の各フレームの模様を移動して、動画を再構成することです。動画をoutputするので、以降はRegistaxなど、従来と同じ処理をすることができます。
また、経緯台で撮影した画像に発生する、視野内回転も補正可能なので、そのような撮影スタイルの方には、有効かもしれません。
では、処理の手順を書いてみます。
・ 撮影した動画から一度スタック画像を作成します。これは、いつもようにimsファイルを作成するための作業です。
使用する動画は、撮影条件が同じものであれば、別のものでも構いません。できれば、長時間撮影する前に、
60秒程度の動画を撮影しておくことをお薦めします。
・ スタックした画像から、imsファイルを作成します。
・ 設定が必要な項目を列記します。
Original video : 処理したい動画(avi、ser)
start time of video(UT)、end time of video : 撮影の開始時間と終了時間。 ※ 中間時刻に合わせこみます。
Image measurement of a preliminary image from the original video : 先のimsファイルを指定
Compensation of field rotation in altitude over azimut mounts : 経緯台で撮影した画像の視野内回転の補正
Output "Stacked image" : WinJUPOSでスタックした画像を出力。
Output "Corrected video" : WinJUPOSで補正した動画を出力。
・ Start De-rotation of video stream : 変換を開始します。
以上です。
それでは、処理した画像を見てみましょう。左上から順に、次の処理をしています。
1: Autostakkert2(Single) + Registax6
2: Autostakkert2(Multi) + Registax6
3: WinJUPOS(stack) + Registax6
4: WinJUPOS(video) + Autostakkert2(Multi) + Registax6
撮影時間は4minのser動画です。"avi"は2Gbyte以上の動画を取り扱えない場合が多いので、元動画は"ser"形式で保存することをお薦めします。なにせ4minでも5.6Gbyteのサイズです。目的からすると、動画の時間は10min以上が良いのですが、それだと10Gbyteを超えてしまいます。
まずこの中で、解像度が一番悪いのが3番めのWinJUPOSでスタックした画像です。それ以外の3枚は、見ての通りあまり差がありませんでした。あえて違いがあるとすれば、4番のリム付近の模様がややはっきりしているかな?ぐらいです。こうして見てみると、4min程度の動画であれば、通常の処理でも違和感なく仕上がるがわかります。また、動画の変換処理だけで10分以上かかりました。
次はメタンバンドで試してみます。まず、変換後のAviファイルですが、なぜか階調が反転しています。録画時のレベルが50%付近なのが影響したかもしれませんが、理由は分かりません。とりあえず、VirtualDubを使って、階調反転した動画を作成しました。 ※ 右の画像
次に、変換した動画を覗いてみると、こんなフレームになっています。撮影時間は15minです。大赤斑付近のリムを見ると、WinJUPOSの処理で不自然な模様が見えます。
この画像を、処理した結果が下の画像です。15minの動画を、そのままAutostakkert2で処理した画像も載せておきました。模様がもっとも見えるのは、3番目の画像ですが、リム付近の不自然な模様を追いかけてしまうので、見栄えに耐える画像にはなりませんでした。スタックをシングルにしてみたのが2番目です。リム付近は平均化されて、ほとんど目立たなくなりましたが、WinJUPOSを使用しない処理結果と、あまり差がありません。
このように、WinJUPOSを使えば、劇的に画像が良くなるわけではないことが分かると思います。
最後に・・・
長時間撮像による動画処理の方法として、WinJUPOSをご紹介しました。みなさんの感想は、思ったより効果が無いな! という感想だと思います。好シーイングの画像で試せば、もう少し違った結果になったかもしれません。
最後に、11月1日のメタンバンド(CH4)画像の結果を貼り付けておきます。
シーイングは、4/10ぐらいでしょうか。連続して撮影した2min x 8画像と、中央時刻に近い2minの画像を並べてみました。この画像は、Registax6での強調処理が異なります。当然、2minx8の方が、強めのパラメータです。
ノイズが減ることで、強い処理に耐えらる画像になります。好シーイングであれば、詳細な模様が得られた思います。
ではでは、ここで一区切りとさせて頂きます。