以前、白色光での撮影システムを紹介しましたが、今回はHα光での撮影システムです。
Hα用フィルターは、2種類を使用しています。
① Coronado Soloar MaxⅡ60+BF10, Pentax75SDHF
② Daystar ION (0.7Å), Borg 125mmSD (口径絞り110mm)
今回は、①のCoronadoのシステムについて書いてみます。
この望遠鏡、昨年の日食騒ぎの中で、ついポチっとしてしまった一品です。最初は、すぐに飽きてしまうのだろと思っていましたが、これがまたツボにはまってしまい、②のDaystarへの散財につながります。
さて、Coronadoの太陽望遠鏡は、完成品を購入することもできますが、私は市販の望遠鏡にメインフィルターと、ブロッキングフィルターを取り付けて構成した太陽望遠鏡を使用しています。
メインフィルタでは、IR/UV等の有害な波長成分のカットと、エタロンと呼ばれる極挟帯域フィルターで構成され、特定の波長域(Hαを含む複数の波長)だけを通過させます。ちなみに、太陽望遠鏡ではこのエタロンが肝のパーツで、このパーツの出来が製品のバラツキに直結しているようです。後段のブロッキングフィルターは、エタロンが通過させる複数の波長成分から、Hαだけを抽出します。
この仕組みで、安全に太陽を観測することができます。
では、市販の完成鏡筒を使用しない理由はなんなんでしょうか?
Coronadoの太陽望遠鏡はHαに特化しているので、光学系の設計波長はHαそのものです。これは収差の面で非常に有利なはずなのですが、知りうる限り、ここを評価している記事は見たことがありません。(評価しにくいとは思いますが)
個人的な意見と狭い知識ですが、下記のような理由だと思っています。
① フィルター部の構造
Cornadoは、現在Meadの傘下になっています。そこで新規に開発されたのがSolarMaxⅡです。この望遠鏡、初代とは大きく異なる点があります。初代は、私のシステムと同様で先端にエタロンが配置されていました。当然口径は60mmです。これに対し、2代目はエタロンが焦点面側、つまりはブロッキングフィルターの手前に配置されています。フィルターの調整が手元側できるメリットはありますが、最大の目的は、エタロンのサイズを小さくすることにより、コストダウンを図ったためだと思われます。エタロンは本来、平行光束を要求されます。これが、集光側に配置されていることから、フィルターの中心波長が光軸から離れるに連れ、微妙に変化している可能性があります。実際、どれだけの影響があるのかは不明ですが、この点を指摘する方は多いです。
② 合焦部が安っぽい
ヘリコイド式の合焦部は非常に安っぽい作りです。ブロッキングフィルターのネジもプラスチックなので、デジイチを付けて撮影する気にはまったくなりません。
上記のような理由から、フィルターを購入してオリジナルを作製する方が多いと思います。ただ、金額面ではメリットがまったく無いので、ご注意を!
・ CoronadoSolarMaxⅡ60mm Telescope with BF10 $1499
・ CoronadoSolarMaxⅡ60mm Filter with BF10 $1399 ※ $100しか違いません
次に、システムを構成する場合のポイントをまとめてみました。
① 口径
Coronadoで入手可能なものは、40mm, 60mm, 90mmで、全て半値幅0.7Åです。
フィルターの中央には、エタロンを支える?なにかがあり、中央遮蔽構造になっています。
価格と口径のバランスで考えれば、60mmがやはりお買い得です。
・ 40mm with BF10 $1099
・ 60mm with BF10 $1399 ← お買い得
・ 90mm with BF15 $3099 ← 一気に高くなる
② ブロッキングフィルターのサイズ
これは、BF5,BF10,BF15,BF30から選定します。数字の違いはフィルターの直径(mm)です。BF5は直径5mmの
フィルターが内蔵されています。このフィルターは焦点面付近に配置されるので、小さいと、太陽の全球面の撮影が
できなくなる場合があります。目安としては、使用する望遠鏡の焦点距離で計算します。全球面を撮影する場合、
焦点距離の約1/100の大きさで投影されるので、BF5であれば、f=500mm。BF10であればf=1,000mmになります。
実際は、この計算値の80~90%程度で使用すれば問題ないようです。
私の場合はBF10を使用していますが、f=500mmの望遠鏡なのでかなり余裕があります。
BF10
③ 焦点距離
上記のBFのサイズにも影響しますが、それ以外にもいくつか注意が必要です。まず焦点距離が長いと、調整が大変です。フィルターには、調整機構がありこれを操作することで、表面模様のコントラストやプロミネンスの明るさが変わります。調整時は、太陽像を見ながら行う必要がありますが、焦点距離が長いと手が届かなくなります。過去に、f=1,200mmの望遠鏡に載せたことがありますが、モニタを使用して調整したものの結構手間でした。また、太陽の全球面を一発で撮影する場合も、焦点距離が長いと大きめなCCDが搭載されている機種でないと、視野からはみ出します。まして、DMK-21AU618のようなカメラで動画撮影を行う場合は、焦点距離が400mmでも最低4回の撮影が必要です。木星や土星と同じシステムで撮影しようと考えている方は、要注意です。
さらなるシステムアップ・・・
Coronadoのシステムは、メインフィルタを2段重ねることで半値幅を0.5Å以下にすることができます。ダブルスタックと呼ばれているものがそれにあたります。全体的な輝度は下がりますが、彩層面のコントラストは向上するので、表面構造は見やすくなります。ただし、フレアを見る場合は輝度がかなり下がっているので、淡いものは見にくくなるという意見もあります。ねじ込み式なので簡単に後付けできますから、最初から用意する必要はありません。
最後まで読んでくれた方、お疲れ様でした。
偏見なく書いたつもりですが、あくまでも私見なので、ご理解を。
ではでは