今回はASI290MMをベースに、ゲインとシャッター速度の関係を評価してみました。
ASI224MC・ASI290MMのどちらも、FiraCaptureで表示されるゲインの値は、0~600です。この値ですが、実測した結果は予想通りdBでした。表示÷10でそのままdBになります。つまり、設定できるゲインは、0~60.0dB(1x~1,000x)です。※ 表参照
ゲインが1000xというのも凄いですが、センサーの設定は実は72dB(4000x)まで可能です。カメラ側で実用性が無いと判断したのか、60dBで抑えられていました。もう一つ注意したいのは、ゲイン30dB以上はデジタル処理でのゲインです(ASI224MCの場合)。30dB以下の設定では、アナログアンプで増幅していますが、それ以上はアナログアンプ+デジタルゲインで処理されます。
で本題ですが、ゲインを変えながら撮影した画像が上です。本来ならシャッター速度を固定して、光量を操作しながらゲインのデータを得るのが正しいのですが、実際の惑星撮影では、対象の明るさは光学系で決まり、撮影はゲインとシャッター速度の組み合わせで行うので、同一光源下でテストしました。ゲインとシャッター速度は当然相反しますので、ゲインが高くなるにつれ高速シャッタ-を切ることになります。なお、画像は撮影データ5秒分をスタック処理しています。各画像、中央付近の四角エリアにノイズが目立つのは、そこだけUnsharp Mask処理をしているためです。見た目でも、ゲインが300を超えるあたりから、画像の荒れが目立ってくるのがわかります。撮影した画像のグレーの領域を100x100ピクセルで切り出し、Photoshopでデータのバラツキを測定したのが、下のグラフです。変曲点はゲインで400ぐらいでしょうか?それ以上になると急激にノイズ成分が増えます。この時のシャッター速度は2.7msec。今回の画像はフルサイズで撮影しているので、ASI290MMでは83FPSで頭打ちになりした。露光時間が10msec程度までは、シャッター速度に比例して取得可能フレーム数も増えますが、それより短いシャッターになると、ノイズが増えるものの取得できるフレーム数は同じになります。なので、相対的にスタック後の画像はノイズが目立つようになります。この結果から大雑把な結論を、下記にまとめておきます。
① ゲインは最大でも400以内、できれば350以下を目安に設定するのが良いと思われる
② やみくもにシャッター速度を早くしない。上記ゲインを目安に、不足分はシャッター速度を遅くして光量を稼ぐ
③ シャッター速度は、転送可能なフレームレートを目安にする。
※ このカーブには、ゲインとシャッター速度の両方の影響が含まれているので、ご注意を。
では、これを元に惑星を撮影した場合・・・というのが書ければよかったのですが、わけあって、現在自宅からは撮影ができません。室内で取得したアマチュアの実験結果なので、惑星撮像とはやや異なる点はあるかもしれませんが、参考になれば幸いです。!(^^)!
2016年6月8日水曜日
2016年6月6日月曜日
CCD/CMOSセンサーカメラの感度特性(1)
月惑星研究会で発表した、各種PCカメラの撮像特性データを掲載しておきます。
※ 気がつけば、カメラだらけです(特に中華製)・・・(^_^;)
評価カメラの一覧 ※ 太字は説明文での呼称
① PGR製 CMLN-13S2M (ICX445ALA, 3.75um, Mono) ← これだけCCDです。
② ZWO製 ASI130MM (MT9M001, 5.2um, Mono)
③ ZWO製 ASI120MM (MT9M034, 3.75um, Mono)
④ PGR製 CM3-U3-13Y3M (Python1300, 4.8um, Mono)
⑤ ZWO製 ASI224MC (IMX224, 3.75um, Color)
⑥ ZWO製 ASI290MM (IMX290, 2.9um, Mono)
※ 安めのCCTVレンズで撮影しています。 35mm F1.7 (F5.6で使用)
※ 各画像は、撮影した画像の中心付近を400×300ピクセルで切り出しています。
惑星屋さんから見れば、木星などを撮影した時の生データーを欲しているとは思いますが、シーイングの影響などで定量的なデーターを得るのは難しく、室内で撮影することにしました。
各画像は、ヒストグラムを見ながら明るさが70%程度になるように調整しています。ただし、モノによっては感度不足でそこまで明るくならないものもあります。またノイズが酷くなると、ヒストグラムがノイズ成分を表示してしまうので、明るさを70%と判断できなくなる場合もありました。素人の実験なので、その当たりは割り引いて見て頂けると助かります。
1) シャッタ-速度 5msecでの画像
ノーマルの撮像条件だと、どれも似たような画像になるのでそこそこ高速のシャッターで撮像してみました。このくらいのシャッター速度になると、ショットノイズが目立ってきます。ASI290MMはピクセルサイズが小さい割には、意外と目立ちません。ICX445, ASI120MM, IMX224が見た目は同じぐらい? ASI130MMとPythonは、ゲインを最大にしても露出不足になります。特にASI130MMは、橫縞ノイズが目立ちます。使用されているセンサーもやや古いので、CMOS固有の欠点がまだ目立ちました。意外だったのは、Pythonです。オンセミの製品で、現在主流の製品ですから、そこそこ感度が高いと思ったのですが、2世代ぐらい前のASI130MMと同等なレベルです。カタログスペックではASI130MMの3.5倍程度感度が高いので、FireCaptureのGain設定、もしくはカメラ側で実用ゲインを制限しているのかもしれません。普段は太陽撮影に使用しているので気になりませんでした。
2) 低照度撮影下での画像
天文屋さんはこちらの方がわかりやすいと思います。撮像時に室内の明かりは全て消したので、肉眼ではテストチャートのパターンは見えませんでした。光源は、廊下の非常灯から漏れてく程度光です。画像の並びは、ASI130MM以外は先の画像と同じです。上段の2コマ目はASI130MMではなく、ICX445の強調画像を載せています。見てのとおり、CCD代表?のICX445は、この条件下では画像を構成することができませんでした。シャッター速度を1秒以上にもできましたが、ノイズが酷くて絵になりません。これに対して、一世代前のCMOSセンサーを搭載したASI120MMは、2秒露光ながらかなりはっきりとした画像を得ることができました。以前このブログで、ASI120MMを紹介したことがあるのですが、そこではほぼ同等の性能で「これからはCMOSセンサーの時代か・・・」などと偉そうなことを言っていました、でも、今回の結果を見るとすでに越えていたかもしれませんね。中途半端なテストで申し訳ありませんでした。m(_ _)m
ちなみに、Pythonもこれ以上露光を伸ばすと、輝点ノイズだらけになります。そして、やはり高感度性能を発揮したのはASI224とASI290でした。どちらも0.5秒以下で十分画質を確保できます。単純に言えば、ASI120MMの4倍程度感度が高いことになります。今回の結果では、ASI224MCの方がやや感度が高いように見えますが、これはヒストグラムがノイズで乱れて、明るさの判断がきちんとできなかったことが要因です。ピクセルサイズが2割ほど小さいことを考えると、単純な感度はASI290の方が高いです。
3) 通常光での画像
33.3msecで撮影したの画像です。あらためてみると、画像の大きさがバラバラですが、これはピクセルサイズを反映しています。焦点距離が固定なので、しょうがないですね。 さて、どの画像も適正露出なので似たような画像ばかりですが、ASI130MMの画質があんまりよくないですね。霞んでいるように見えますし、感度もけっこうギリです。うっすらとですが横縞ノイズも見えていますね。ちなみに、Gain表記横の%は最高感度設定に対する割合です。これで単純に評価すると、感度はだいたい以下の順になりました。
ASI290MM > ASI224MC > ASI120MM > ICX445 > Python > ASI130MM
やはりASI290MMは、モノクロなのでカラ-フィルター付きのASI224MCよりかは感度が高そうです。このセンサーはカラー仕様もあるので、同じカラータイプで比較できるとよかったんですが、これ以上赤い缶詰が増えてもなんなんで、PCカメラは打ち止めにしています。ちなみにカタログスペックだと、ピクセルサイズを考慮した場合、ASI224MCの方が8%ほど感度が高いです。
長くなってきたので、残りは次回です・・・
撮影風景
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