ここ最近は、彗星の撮影にシフトしていました。ただ写すだけなら簡単なのですが、テイルの形状とかをそれなりの描写に仕上げようとすると、短時間で移動し変化する彗星固有の挙動が、撮影を難しくします。
特に今回のLovejoy彗星のようなイオンテイル主体で、なおかつ地心距離も近いと、数十分程度でその形状が変化しているのが見て取れるので、何時間も露出してノイズを平均化する手法では、イオンテイルの微妙な変化を打ち消してしまいます。しかし、淡い部分の表現は、当然露出時間を増やした方が鮮明度は上がります。当たり前と言えばそうなのですが、
今回色々と試した末、彗星撮影には明るい光学系が有効なのだな! と実感した次第です。
さて、短時間で撮影を完了する要素のもう一つに、撮像系の感度があります。
ここからが本題なのですが、高感度撮影用として最近話題のα7S(以後A7Sと表記)を手に入れました。年末~年始にかけてヤフオクで未使用品を売りまくりましたが、そのお金は全部消えてしまいました。(物欲に憑りつかれていますね)
実地投入はまだですが、曇天が続いているので会社の恒温槽を使ってノイズ試験をしてみました。これがまた思ったより大変で、カメラ3台を、しかも1台あたり8コマ撮ってコンポジット処理をしよう!!などと思ったものですから、30秒×8コマという中途半端な間が延々と繰り返され、結局始めてから完了するまで8時間近くかかりました。
ボヤキはともかく、下記にその結果を載せておきます。なお、A7Sのリモート制御アプリがとっても貧弱で、インターバル撮影時にバルブの露光時間が設定できません。仕方がないので、最長シャッター時間30秒で統一しました。彗星撮影目的
で評価したので、私的にはこれでOKなのですが・・・
(試験内容)
・ 測定温度: 室温(22℃)、10℃、0℃
・ カメラ: EOS60Da、EOS6D、A7S
・ ISO感度:1600、3200、6400、12800
・ 露光時間:30秒×8枚 ※ RAW現像はPSで、WBは撮影時の設定。コンポジットはSI7
さて結果ですが、噂のとおりA7Sは低ノイズでした。後半にノイズの標準偏差値をグラフ化していますが、A7Sのノイズレベルは6Dの約半分ぐらいでした。6DでISO3200で撮影した対象を、A7SならISO6400で撮影できる可能性があります。露出時間が半分、同じ露光時間なら倍の撮影枚数が稼げますから、彗星撮影には、向いているカメラと言えそうです。
※ 実際の写りについてはこれからですが
それ以外にもいくつか分かりました。
・ 天文用として販売された60Daと比較しても、6Dのノイズは半分ぐらいです。6Dのノイズの低さが実感できました。
・ ISO1600付近から、A7Sと6Dのノイズは差がほとんど無くなります。低感度撮影であれば、両者の差は小さそうです。
・ 温度との関係ですが、10℃以下になるとあまり変わらなくなりました。これは、熱ノイズより電気的なノイズの影響が
目立ってくるためかもしれません。星ナビ2008年11月号で冷却デジカメの特集がありましたが、同様の結果でした。
・ 後半に、カメラが出力したJpegのノイズデータも掲載しております。こちらは、A7Sより6Dの方が低ノイズの印象です。
200%に拡大していますが、A7Sの方はパターン状のノイズも確認できます。Jpeg生成エンジンの性能差ですかね?
結論として、高感度を利用した短時間露光が必要な対象にはやはり有効そうです。ただ、ISO800~1600程度でじっくり撮影するような場合はメリットが薄いかもしれません。あと、リモート制御用のアプリがおまけ程度の機能で、Canonと比較するとその差は大きいです。
今週晴れれば、テストを兼ねて彗星を撮影しに行く予定です。撮像性能も、このとおりだと良いのですが・・・・
環境温度22℃での背景ノイズ(Lv=32で切り詰め)
環境温度10℃での背景ノイズ(Lv=32で切り詰め)
ノイズの平均レベル(8bit換算) 黒線:60Da、赤線:6D、青線:A7S
ノイズの標準偏差(8bit換算) 黒線:60Da、赤線:6D、青線:A7S
Jpegの背景ノイズ (Lv=16で切り詰め、2倍に拡大)
8 件のコメント:
根気が必要なテストとその結果、有益な情報を得られ、素晴らしいです。
カメラそれぞれに特性があるので、可能なら撮影目的に応じてカメラを選ぶことが必要そうですね。
初期の一眼デジのノイズは、同じ機種でも個体差が激しかったけど、今は固体差は少なくなっているのでしょうね。
ヨネヤンさんへ
A7Sは、解像度を下げて高感度にまとを絞った、けっこうスペシャルなカメラですね。たしかにノイズは少ないのですが、輝点ノイズが目立ちます。天体を撮影した時に、どの程度の影響があるのかが、次の確認事項です。
個体差の程度は分からないですが、今後もしばらくは、センサーの高感度・低ノイズ化は進むでしょう。ISO3200,6400が、なんの問題もなく使用できる日がくると思います。
興味深い実験レポートお疲れ様です。α7Sは発売当初あちらこちらで購入したという天体写真屋さんがいらしたようですが最近はあまり聞かないので気になっていました。実写が楽しみですね。赤いのがある程度写ればノータッチ高感度短時間露出で楽しめそうな気がします。
ibuki05006さんへ
2日前にA7Sを試し撮りしてきました。
細かい感想はいずれアップしたいと思うのですが、感想だけ書いておきます。
・ 同ISOでも、6Dの半分ぐらいの露出時間
・ 同じ時間撮影すれば、背景ノイズはA7Sの方が優れている
・ 画素が少ないので、星が綺麗な丸にならない。 ※ VSD100の場合角々になる
明るい光学系で星雲星団を撮影するのには、やや不向きですね。シュミカセとかには良いかも?!
画像アップも楽しみにしています。短時間露光スタックの長焦点の銀河向きといったら私の用途には向いているもしれません^ ^
シュミカセはお持ちしたっけ?ぜひ試していただきたいです(^o^)/
画像アップしました。
シュミカセはC-11があるのですが、腰にくるので・・・(最近は腰が痛くて)
根性あったら試してみます。
こんどうちの16インチで遊びましょう^ ^
長岡君へ
ぜひ!
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